September 14, 2022

「I never dreamed of success, I worked for it(成功を夢見たことはありません。 成功に向けて努力したのです)」。これは、まだ女性が働くことすら珍しかった時代にブランドを創業したエスティローダー夫人の言葉。あらゆる人の力、そして自分自身の力を誰よりも信じ動き続けた彼女は、誰もが持つ無限の可能性を信じることの大切さを伝えてきた。この夏、そんなメッセージを広く届けるため、エスティ ローダーでは「MY OWN HERO, 明日はもっとなりたい私へ」というキャンペーンを展開している。

では、実際に自らの可能性を広げている人々の内側には、どのような思いや信念があるのだろう?Discoverでは、自らの手で未来を切り開いている人々の7つの言葉とエピソードから「明日、もっとなりたい私」を叶えるためのヒントを探る。

今回話を伺ったのは、篠原ともえさん。10代、20代を歌手やナレーター、俳優として、そして現在はデザイナーやアーティストとして活躍を続けている彼女に、挑戦し続けるための推進力を訊いた。

 

1. 「やってみたい」という気持ちを受け入れる。

ー 篠原さんは歌手デビューからデザイナーへの道に進み、さらに2020年にはクリエイティブスタジオ「STUDEO」も設立して活躍の場を広げられています。そうした変化をおこすことに、不安や迷いはありましたか?

デザイナーへの道を選び、会社を設立するという新しい挑戦には大きな勇気が必要でした。「STUDEO」の立ち上げと同時期に「SHIKAKU」展という展覧会を開催したのですが、これは今までの自分のイメージとは違うところに踏み込んだチャレンジだったんですね。なので、これで本当によかったのかなと何度も不安を感じました。でも、それよりもやってみたいという気持ちのほうが大きかったから飛び込んでみたんです。すぐに答えが出るものでもなく、悩んでいても仕方がないので、やってみたいという自分の純粋な気持ちを素直に受け入れ踏み込んでみました。そうしたら、賛同してくれる人がこんなにもいたんだと気づくことができ、トライしてみることの意味が見えてきました。挑戦したことが少しずつ成功に繋がってきたから、私はもうチャレンジすることが怖くないんですよ。

 

2. ワクワクした気持ちを育てる。

ー 何かに挑戦したいと思うとき、なかなか踏ん切りがつかなかったり、環境が許さなかったりという人もいると思います。篠原さんはどう最初の一歩を踏み出しましたか?

本当にその人がやるべきことは、時間が待っていてくれると私は思うんです。何かに挑戦したくても思いとどまってしまったり、自分の環境で悩まれたりする方もいると思うのですが、いまじゃなくてもいい。迷っている人が側にいたとしたら「絶対に大丈夫」って声をかけたいですね。いつか踏み込むその時が来るまで準備しながら、ワクワクした気持ちを育ててあげることが大切だと思います。例えば、憧れている人に会ってみるとか、学校でなくともワークショップに行ってみるとか。やりたいという思いは止めないようにしています。私も10代のころからデザイナーを夢見ていて、ただ、20代30代と当時の仕事に誇りを持ってやっていましたし、本当に自分はここからデザイナーとしての道を歩んでいいのかという葛藤がありました。でも、40代になって本当の自分の気持ちと向き合い、受け入れることで、いままでにない体験や見たことのない景色に出会え、周りの人も喜んでくれた。だから、できると信じてよかったなと思います。それに、年齢ごとの悩みや思いが積み重なったからこそ、デザイナーのお仕事をするという自分としての答えが出せました。そうした時間を持てたことに今では感謝しています。

もちろんその決意には時間がかかりましたし、両親や夫にもたくさん相談をしました。でも最後は、結局自分自身がどうありたいかなんですよね。これまでステージに立って人前でのお仕事も本気で取り組ませてもらったから、それを支えに新しいことにチャレンジすることは、今の自分やこれからまた年齢を重ねた時の私が喜ぶんじゃないかなって思ったんです。そうやってチャレンジを繰り返して、自分にできること、やるべきことが徐々に明確に見えてきたような感じもありますね。

 

3. 自分自身をデザインしていく。

ー そうして何歳になっても挑戦を続ける姿に勇気づけられます。年齢との向き合い方について教えてください。

年齢を重ねることで得られるものも多いですよね。いろいろと経験したからこそ醸し出せる貫禄というか雰囲気だったり。その年齢だから巡り会える人や話せる人もいます。また、これまでの体験を踏まえて生まれてくるアイデアやつくり出せるもの、似合うお洋服やメークだってありますよね。私は、そういう年齢ごとの変化と進化を楽しみながら前進していければと思っています。これまで続けてきたことや愛してきたことも大切にしつつ、だけどあまり執着はせずに、記憶や時間を育みながら成長していければなと。その時々で得られるものは違うので、年齢問わずその瞬間を逃さないようアンテナを張るということも、新しい挑戦やキャリアアップにつながるので大事にしています。

ー 篠原さんは自分らしさと常に向き合ってこられたように感じるのですが、年齢を重ねるにつれその時々の自分らしさをどう見つけているのでしょうか?

私の場合はイメージする自分、なりたい自分をまず視覚化してみます。髪型だったり洋服だったり、似合いそうなものをスケッチすることもあります。変化でいえば、自分の衣装は、例えば20代、30代のライブのステージではカラフルで華やかなものを取り入れていましたが、デザインの世界に入ったら自分というよりは別の対象物に自身の表現が投影されるので、自ずとモノトーンだったり、動きやすさや着心地を重視したスタイルにシフトしていきました。絵に描いてみることで、私という人生のステージにどういう自分がその時いたら相応しいかがクリアになることもあります。自分自身をデザインしていくように、自分を見つめるきっかけにもなるんです。

 

4. 自信をもって自由に自分らしく。

ー どんどん挑戦をされるなかで、挫折はありましたか?

挫折はもちろんたくさんありました。作品ができない時期が1年近く続くこともあったし、学校に行っても自分のスキル不足に悩んだりする時間もありましたね。

ー そうした挫折をどうやって乗り越えてきたのでしょうか?

うまくいかないことばかりに気を取られないで、自分と向き合う時間を大切にするようにしたんです。昔からステージに出る前などに「自信を持って自由に自分らしく」と唱えるようにしていたのですが、そのおまじないを心の中で繰り返しながら「絶対にできる」という方向にコツコツ自分をもっていってあげるんです。手が動かなかったら、図書館や美術館に足を運んで別の角度から意欲を刺激してみたり。ポートフォリオを持ってデザインの先生やカメラマンさん、専門家の方のところへ行き、ご意見を伺ったりもしました。そういう時間をつくって外と中から自分に向き合ったことがよかったなと思います。

 

5. 自分に体験を積んでいってあげる。

ー 自分を信じるために、あるいはモチベーションを高めるために心がけていることはありますか?

例えば経験したことがない仕事が舞い込んできたとき、興味があるならまずはやってみることです。それが学びになり、自分の体験になり、生き方になるというふうにどんどん循環して、結果自分らしさにつながり、自信にもなる。今があるのはその経験値のおかげでもあるので、いかに自分に豊かな体験を積んでいってあげるかを大切にしていますね。色んな人に会ったり、色んなところへ訪れたり、先ほども話しましたが、常にアンテナを張りながら多くのことに興味をもつよう心がけています。

男性でも女性でも、どんな仕事をしている人でも、やっぱり自分らしく活き活きしている人って素敵だなって思うんです。人間として魅力的で、自分にとってプロフェッショナルだなぁと感じる方にたくさんお会いするのも、モチベーションを高めるためによくしています。

 

6. 自分の手と道具を信じる。

 

ー 挑戦や変化を続けるために、心のケアなどはしていますか?

昔からものをつくることがある種、心のオアシスになっているんですが、その中でも「感触」を大切にしています。版画の版材にニードルで彫る感覚や、ドローイングなんかを描くときは紙に鉛筆が埋まる感じ、布を縫うときには針が布に触れる瞬間など、触覚を刺激する創作が好きなんですよね。何かをつくってはいるんだけど、その感触を味わいたくて何時間も没頭してしまうこともあって、終わった後に気持ちがスッキリするんです。

ー いま版画のお話がありましたが、今日お持ちいただいたお洋服や版画も篠原さんの作品ですよね。

版画はもともと美術館で版画作品を見て自分でもつくってみたいと思ったのがきっかけで習い始めました。私は紙凹版といって紙を削る版画を習っているのですが、特に何を描くかは決めずに自分の手と道具を信じて削り始めてみたんです。とても感覚的なんですけれど、そうして自分の手や道具、感性を信じて仕上げたものが今日お持ちした作品たちです。常にオリジナリティをもって生きていきたいという思いがあるので、美術館や図書館に足を運んでインスピレーションや刺激はもらいつつも、最後は自分の感覚をとても大事にしていますね。

 

7. 人に預けてみる。

ー 最後に、これからの挑戦について聞かせてください。

これまではデザインにしても一人で取り組むことが多かったのですが、今は夫と会社を立ち上げ、制作はもちろん、成果物を撮影し、グラフィックや映像に落とし込んでPRまで展開できるチームを持てるようになり、自分の世界観を一貫してお届けすることが可能になってきました。ですので、その世界観をきちんとチームへ伝達できるよう、ディレクションの視野、スキルをもっと育てていきたいです。チームを強くして自分らしく力強いものを世の中にたくさん届ける事ができたらと思っています。

今まではどちらかといえば全部自分でやりたいタイプでしたが、これもディレクション能力につながることですが、預けた方がいいところは人に預けるようにしています。今は信頼できるチームとともに力を合わせ、これまでにないものづくりができているので、大変なこともありますがそれ以上にとても楽しく充実しています。

 

篠原ともえ Tomoe Shinohara
デザイナー/アーティスト

1995年歌手デビュー。文化女子大学(現・文化学園)短期大学部服装学科デザイン専攻卒。映画、ドラマ、舞台など歌手・女優活動を経て、現在はイラストやテキスタイルデザインなどでさまざまな企業ブランドとコラボレーションするほか、衣装デザイナーとしてもアーティストのステージ・ジャケット衣装を多数手がける。2020年、アートディレクター・池澤樹と共にクリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。同年7月に開催した「SHIKAKU -シカクい生地と絵から生まれた服たち-」では、サステナビリティと向き合い廃棄となる余剰の生地を余すことなく使い切る衣装作品などを展観。2022年、日本タンナーズ協会と協働しデザイン・ディレクションを手掛けた革のきもの作品「THE LEATHER SCRAP KIMONO」が、世界で最も歴史ある国際的な広告賞ニューヨークADC賞「The ADC Annual Awards」にて、ブランド・コミュニケーションデザイン部門で銀賞、ファッションデザイン部門で銅賞を受賞した。

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